薄汚いアメリカの、汚い戦争
コロンビア麻薬紛争
- 左翼ゲリラとアメリカ -
PLAN COLOMBIA (コロンビア作戦)
フリーウィル プロバクション
(フランス 2002年)
2005/3/27
| インタビューに答えた人 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
* 各人の発言は、すべて個別に収録されたもの。 発言が前後するのは編集によるものである。
<空論でしかない『麻薬撲滅運動』>
豊かな自然と多様な文化を持つ国、コロンビア。
現在、世界最大のコカインの生産地、そして輸出国だ。
この30年間、アメリカを中心とした麻薬撲滅政策が進められてきたが、麻薬の密売は後を絶たない。
麻薬取引は世界で数千万人という利用者を相手に、莫大な利益を上げている。
コカインの原料となるコカの葉は、コロンビア全土で栽培されている。
農業の国際競争に敗れ、貧困に追い込まれた多くの農民が、麻薬の密売人に雇われるようになっている。
在コロンビア・アメリカ大使 ジェームズ・H・ウィリアムズ
「現状をどうにかしなければならないという使命感から、アメリカはコロンビア政府と協力してコカインの製造と密売を減らすために、徹底した戦略を打ち出してきました。その中でも特に重要なのは、古くからコカを栽培している小規模な農家への対策です。コカを栽培しなくても採算がとれ、環境にも優しい、代替作物を農家に作ってもらうことが大事だと考えています」
小規模農家の家族
「コカやアヘンの栽培を続ければ、収穫物は処分され、刑務所に送られるかもしれない」
アメリカ国務省 ウィリアム・ブラウンズフィールド
「しかし、『コロンビア政府の代替作物の支援計画に協力してくれれば、家族を養って、生活をしていくだけの補助金は与える』、こう私たちは呼びかけているのです」
プエルトアジス市長 マヌエル・アルゼート・レストレボ
「補助金の額は200万ペソです。だいたい950ドルです。これでは少な過ぎます。5人家族で年に950ドルではやっていけませんよ。こんな補助金に頼って一生暮らしていくなんて無理な話です。コロンビア政府が十分な援助を行わない限り、農民にコカの栽培を止めさせるのは、非常に難しいでしょう」
<代替作物を作っても、その輸送手段も道路も無い しかも僅かな支援金では生活もできない>
農民
「代替作物の支援計画なんて、何一つ実行されていない!」
「政府は我々と結んだ協定をキチンと守るべきだ!」
「協定の実行と社会投資を望んでいる!今のままでは飢え死にだ!」
「約束を守らないなら、またコカの栽培を始める!」
国連人権高等弁務官 コロンビア事務所 アメリコ・インカルカテラ
「農民は政府が進める農作物への転換に、あまり積極的ではありません。小規模な農家はまるで国から見捨てられたような貧しい地域に住んでいます。そのような農家では、コカを栽培する意外に生計を立てていく手段が無いのが現実です」
政策問題研究所(ワシントンDC) サンホ・ツリー
「農民にとって、コカの栽培は経済的に大きな利益になるのです。自分たちの農場でコカの葉を練ったコカペーストも作っています。ブローカーや密売人は、農場か近くにある町で、このコカペーストを現金で買っていきます。アメリカが進めている政策はコカの栽培の代わりに、合法的な作物を栽培させようというものです」
コカ栽培農家 エルナン・サンタンデール
「農場で生産した作物を誰が買ってくれるのか、いつも市場を考えて栽培しているのです。誰も買ってくれないような作物では、最初から何も作らないのと同じことです」
政策問題研究所(ワシントンDC) サンホ・ツリー
「コカの代わりに、ユッカやオオバコ、パイナップルを栽培するように進めても、それらの作物を運ぶ輸送手段も、道路も無いというのが現状です。そのために国外の市場に出すこともできず、国外経済国内の中でも競争力を持つことができないのです。コロンビアの農業が国際経済に太刀打ちできないことが問題なのです。今の状況では代替作物への転換は難しいと思います」
<クリントンのコロンビア計画 : 極悪の『コロンビア枯葉作戦』>
かつて、アメリカのクリントン政権が掲げた麻薬撲滅政策は、『コロンビア計画』と呼ばれた。
総額13億ドルにも上る計画だが、代替作物への転換に当てられた予算は20%以下だ。
その予算の多くは、コロンビア南部のコカの栽培地に除草剤をまく事業に使われた。
アメリカ国務省 ウイリアム・ブラウンズフィード
「コロンビアではアメリカ政府の支援の基に、麻薬撲滅のために、コカの栽培地域に除草剤の空中散布を行っています」
プエルトアジス市長 マヌエル・アルゼート・レストレボ
「2000/12月から翌年の1月にかけて、プトゥマヨ州の5つの市で、除草剤の空中散布が行われました。コロンビアとアメリカ、両政府からの情報によると、この1ヶ月半で、およそ300km2に除草剤がまかれたそうです。しかし、この1ヵ月後に撮影された衛星写真で、コカの栽培地が逆に増えていることがわかったのです」
アメリカ下院議員 ジム・マクガバン
「コカの生産は減るどころか、11%も増えました。除草剤の散布は効果が無かったのです。」
国際政策センター(ワシントンDC) アダム・アイザックソン
「麻薬を生産する農民を標的にした作戦は失敗するに決まっています。経済的に考えてみれば判ることです。麻薬を生産している農民は、コカ・ペーストを1kgあたり1000ドルで売ることができるのです。そのたった1kgから精製されたコカインは、アメリカの街頭でg単位でさばかれ、密売人は10万ドル以上もの利益を上げるのです。コカの生産が減り、コカ・ペーストの値段が1kg3000ドルに跳ね上がったとしても、密売人の利益は2000〜3000ドルほど減るに過ぎません」
緑の党 イングリット・ペタンクール
「除草剤の空中散布は単にアメリカ政府を満足させるだけの手段に過ぎないと思います。コロンビアの麻薬撲滅に力を入れていることを、アメリカ本国でアピールできれば、それでいいのです」
マサチューセッツ工科大学教授 ノーム・チョムスキー
「何の権利があってアメリカはコロンビアに介入できるのでしょうか?コロンビアに、アメリカのケンタッキーやノースカロライナを爆撃する権利がありますか?そのいずれも世界で最も多くの人を死に至らしめているドラッグ、つまりタバコの生産地です。最新の統計に拠りますと、タバコが原因で亡くなった人の数は、麻薬が死者のおよそ25倍となっています。それでも他国がケンタッキーやノースカロライナに薬をまく権利があると、誰も考えません」
<枯葉作戦はマジメな農家も襲い貧困に陥れる結果になった : 結果、麻薬栽培農家が増えた>
20年間に渡って、ペルーやボリビアの、コカの麻薬地域にも除草剤がまかれたが、結果は栽培地が移動しただけだった。
それでも、アメリカ政府は、アメリカ企業による空中散布をコロンビア計画の柱に据えてきた。
プトゥマヨ州在住の農民 トゥーリオ・サンタンテール
「私はプトマヨ州で暮らしていますが、薬剤の空中散布で、私の農場の作物は何もかもやられてしまいました。自分の食用に作っていたバナナにまで除草剤がまかれたのです。ユッカも魚もみんなやられてしまいました」
世界自然保護基金 ティオ・コルホーン
「薬剤の空中散布で、薬がかかってしまった人々の間で、皮膚疾患が増えていることから、不安が広がっています」
アメリカ下院議員 ジム・マクガバン
「アメリカが現在、行っている除草剤の散布は人権侵害にあたるものだと思います。空からまかれる危険な化学物質は、コカだけではなく、普通の作物や人々が飲み水としている井戸にまで降りかかっています。子供から妊婦、高齢者なども薬剤にさらされているのです」
在コロンビア・アメリカ大使 ジェームズ・H・ウィリアムズ
「除草剤の害については、よく耳にします。しかし、指摘されていることが事実なのか、もっとよく調べてみなければ、対応のしようがありません。ほとんどの場合、大規模な栽培地で、上空20〜30mから散布されています。ただ、ヘロインや大麻を栽培しているのは山岳地帯なので、かなりの高さからまかなければならないのは事実です」
<極悪!アメリカの枯葉剤の猛毒が、国境を越え、アマゾン川流域を汚染する>
アメリカ国務省は、大手化学メーカーに高いところから空中散布しても効き目のある除草剤の開発を委託した。
メーカーは市販されているものより強力なものを開発したが、その成分は公表されていない。
薬剤に含まれる有害物質はアマゾン川流域に流れ込んでいく。
散布は、コロンビア国内だけの環境問題ではなくなっている。
在コロンビア・アメリカ大使 ジェームズ・H・ウィリアムズ
「空中散布されている薬剤が環境に悪影響を与えているという科学的証拠は何一つ目にしていません」
世界自然保護基金 ティオ・コルホーン
「除草剤については、早くから研究が行われてきました。コロンビアの森林に空中散布されている薬剤が、甲状腺や脳、そして肝臓やすい臓に悪影響を与えることは、明らかな事実です。また、中には男性の精子を作る精巣内の組織に腫瘍を作るということを示したという研究例もあるくらいです」
アメリカ上院議員 ポール・ウェルストーン
「私たちは過去にも除草剤を使ってきました。ベトナム戦争です。あの除草剤はガンを始め、恐ろしい病気と高い相関関係にあることが、後になって判ってきました」
世界自然保護基金 ティオ・コルホーン
「薬剤にさらされた人々の世代や孫の時代にどうなるのか、考えただけでもゾッとします。ダイオキシンが人体に影響を及ぼすことが判るまで、40年もかかったのです。今度も長い時間、何もしないで見ているのでしょうか?」
アメリカ上院議員 ポール・ウェルストーン
「私たちは何か別の方法を考えるべきだと思います」
政策問題研究所(ワシントンDC) サンホ・ツリー
「数年前、軍のコンサルティングを数多く手がける保守系のシンクタンクが、アメリカ軍と国家麻薬取り締まり政策室の委託を受けて、『コカイン取締り』と題する研究を行ったのです」
マサチューセッツ工科大学教授 ノーム・チョムスキー
「いくつかの、麻薬対策が比較検討されましたが、麻薬汚染の予防と治療。これは最もコスト的に効率のいい方法でした。次にアメリカ国内での警察の取締り強化策。その費用効果は予防と治療に比べ7分の1でした。国境警備を徹底する政策は11分の1。コロンビアのような薬剤散布といった対策に至っては23分の1といったありさまで、コスト面だけでも効率の悪さは際立っていました」
政策問題研究所(ワシントンDC) サンホ・ツリー
「アメリカは最も効率の悪いやり方を追求していたということになります」
緑の党 イングリット・ペタンクール
「麻薬撲滅を目指すコロンビア、アメリカの両政府が、問題の核心ではないところに焦点を当てているのです。これは奇妙としか言いようがありません。諸悪の根源である麻薬の密売人には何の追及も及んでいないのです」
<化学メーカー&軍事産業の利益ための枯葉作戦で、人々はさらに苦しみ、そして麻薬生産量も増加する>
除草剤の効果が表れない一方で、コカインの生産量はこの10年で2倍に達している。
なぜ効率が悪いと判りきっている空中散布に、何十億ドルも注ぎ込んだのか。
世界政策研究所(ニューヨーク) ウィリアム・ハートゥング
「コロンビアの大統領が麻薬撲滅案を携えて、アメリカの大統領(クリントン)を訪問したとき、その内容は軍事的なものではなく、代替作物への転換や、経済開発を中心にしたものだったのです。ところが計画はアメリカ国防総省によって、一気に軍事化してしまいました。その後、数年間に渡って組まれた17億ドルの予算の内、80%が軍事行動に充てられてしまったのです」
コロンビア国会議員 ルイス・タルス
「コロンビア計画が、コロンビアの議会で直接、論議されたことは全くありません。主な決定は(コロンビアの)政府機関とアメリカ国務省によって行われました」
世界政策研究所(ニューヨーク) ウィリアム・ハートゥング
「あの計画の中で、アメリカ議会は、テキサスやコネチカットにあるヘリコプターのメーカーで軍用ヘリを何機製造するかということを最大の優先事項としていました。軍事支援が麻薬撲滅戦争の解決策になるのか?それによってコロンビア国民にどのような影響が及ぶのか?といった議論ではなく、議員たちは地元企業に金が転がり込んでくるのか?それとも他の企業に取られるのかといった話に終始していたのです」
国際政策センター(ワシントンDC) アダム・アイザックソン
「ヨーロッパや南米諸国の中で、アメリカのコロンビア政策を全面的に支持している国はひとつもありません。麻薬対策としては失敗だと見られているのです。アメリカ政府の取り組み方全体に問題があるということです」
世界政策研究所(ニューヨーク) ウィリアム・ハートゥング
「あの計画はアメリカの軍事産業のためといった感が強いですね」
<コロンビアでも、ベンリな傭兵会社を利用する アメリカ政府>
コロンビアの軍事行動では、アメリカ政府は正規の軍隊の代わりに、傭兵を使っている。
在コロンビア・アメリカ大使 ジェームズ・H・ウィリアムズ
「コロンビアで軍事行動に従事しているのは、アメリカ軍の兵士ではありません。傭兵たちが軍事作戦に参加しています。でも、このことが、特に軍事的に問題になるというわけではありません」
アメリカ下院議員 ジャニス・シャコウスキー
「民間の軍事請負業者を使う場合、アメリカ軍と同じ管理責任や義務は問えません」
「国民の目を盗んで、アメリカが税金を使って行っている戦争といえるでしょう」
政策問題研究所(ワシントンDC) サンホ・ツリー
「コロンビアの麻薬撲滅戦争に民間の力を使っているのは、アメリカ軍の現地派遣にアメリカ国内で支持を得られていないからです。このため、任務の遂行は民間の請負業者に頼るしかないのです」
世界政策研究所(ニューヨーク) ウィリアム・ハートゥング
「コロンビアでどんな軍事行動を展開しているのか、多くのアメリカ人は知りません。でも、アメリカから受けている軍事支援の額では、コロンビアは世界で3番目に多い国なんです」
アメリカ下院議員 ジョン・コニャース
「コロンビアの軍事援助に対する心配は常にありました。何しろ、30年間に渡って内戦が続いている国ですから」
<内戦の続く国 コロンビア>
麻薬戦争が始まる前から、コロンビアでは内戦が続いていた。
そして、少数の富裕層と大多数の貧困層という、社会の二極化が進んでいった。
やがて人民主義のカリスマ的指導者 ホルヘ・エルセル・ダイタンの暗殺をキッカケに、大暴動が起きた。
地主や資本家たちは私兵団を送り込んで、蜂起した労働者や農民を弾圧。
地方に追いやられた労働者たちはゲリラ活動を開始する。
アメリカ政府はコロンビア政府への支援を重要項目とし、政府軍の他に、自警団からなる準軍事組織を訓練し、各地に潜む反政府ゲリラの一掃を目指した。
しかし、ゲリラ戦の訓練を受けた兵士を1万人以上も投入しても、内戦は鎮圧できなかった。
1980年代の始め、大金を動かす麻薬の密売人が暗躍し始めると、戦いはさらに激しくなっていった。
麻薬撲滅というスローガンを口実に、アメリカ政府は膨大な武器をコロンビア政府に与え、ゲリラの撲滅に乗り出していった。
コロンビア革命軍幹部 ラウル・レイエス
「(アメリカ政府の)コロンビア計画が、反政府ゲリラ活動に与えた唯一の結果は、一層、戦闘が増えたということくらいです。アメリカの対ゲリラ戦が強化されれば、ゲリラ側も自衛のために反撃しなければなりません」
アメリカ下院議員 ジョン・コニャース
「コロンビア革命軍を麻薬密売のゲリラと決め付けてしまえば、反政府活動に参加する者すべてが麻薬密売人だと言って、容赦なく攻撃することができます。現在、アメリカが投入している(攻撃)ヘリや武器を向けることもできるのです」
コロンビア軍 元大佐 カルロス・ベラスケス
「コロンビア革命軍と麻薬組織を同一視するのは間違いです。プトマヨ州のゲリラ活動は、コカが栽培されるより、はるか昔から行われていたのですから」
コロンビア革命軍幹部 シモン・トリニダード
「我々コロンビア革命軍が行っているのは、農民からコカを買い付ける者に対して、税金を引き上げるだけです。他の輸出入品に対しても同じことをしています」
「コロンビアという国は階級闘争が絶えない国なのです。都市周辺や地方では毎日のようにデモやストライキ、道路封鎖が起こっています。これは貧しい生活をおくる2200万人ものコロンビア市民の味わってきた苦しみの産物なのです。さらに極貧生活者が800万人は存在しますから、合計すると4000万人の(コロンビアの)人口のうち、3000万人が貧困にあえいでいることになります。このような社会では、みんな不満が募り、新しい政治的組織が生まれたり、社会闘争が生じてくるものなのです」
コロンビアの人権擁護活動家 パードレ・ヒラルド
「そもそも、コロンビア革命軍のゲリラ活動は、古典的マルクス主義で謳われた階級の無い社会の実現を政治目標に掲げていました。旧ソビエトの共産党の路線です。しかし今では、政治・経済・社会の面でコロンビア国内の現状を改革する政策も受け入れた組織となっています」
エクトル・ファビオ キリスト教司教
「多くの若者が反政府ゲリラのグループに参加しました。それにに代わる政治組織が存在しない上に、コロンビア人の考え方が他の方法を認めないからです」
<麻薬密売を仕切る アメリカ政府の準軍事組織>
コロンビア革命軍は貧困層の開放を目指し、民衆の支持が高い組織といわれるが、その反面、国家を脅かす犯罪組織という見方もある。
コロンビア革命軍が誘拐や恐喝を、活動の主な資金源にしていることは、よく知られている。
しかし、コロンビア革命軍に対抗する、(アメリカの)準軍事組織も麻薬密売を幅広く仕切りながら、毎週のように暗殺や虐殺を繰り返している。
エクトル・ファビオ キリスト教司教
「表向き、準軍事組織の活動は、コロンビア政府から完全に独立しているように見えます。国内紛争の当事者であるにも関らず、まるで第三者の立場に立っているかのように紹介されています。しかしこれはイメージを間違って伝えていると思います」
アメリカ上院議員 ポール・ウェルストーン
「準軍事組織と政府軍は、あまりに繋がりが深いのです。罪も無い人々を虐殺した数多くの事件で、政府軍は準軍事組織の仕業と知っていながらも、何も手出しをせず、目を背けるばかりで、市民を守ろうともしないのです」
<準軍事組織の支配する石油の町 バランカベルメッハ>
コロンビア最大の石油基地がある石油の町 マグダレ−ナ・メディオ州バランカベルメッハは、コロンビアで最も危険な町のひとつだ。
かつてはゲリラの拠点だったが、準軍事組織がゲリラを追放し、支配下に収めた。
そして、対ゲリラ戦で手を結ぶ警察や政府軍が満足するように、コロンビア革命軍や他のゲリラを次々に殺害していった。
ハイメ・ピエトロ キリスト教司教
「バランカベルメッハは変わってしまったと言う人がいます。私はこの町の支配層が変わったのだと思います。状況が一転し、軍軍事組織がこの町を制するようになっても、誰もそれについて議論することができないのです。もちろん、口をつぐんでいるだけで、虐殺や暗殺の正当化に繋がるわけではありませんが、こんな横暴は断固として糾弾すべきものです」
平和開発プロジェクト パードレ・ドゥ・ルー
「ここ2週間で、我々の平和開発プロジェクトに関る2人のスタッフが準軍事組織に殺されました。弁護士のマルマーロ・サ・ハラミーリの遺体は見るも無残な状態でした。もうひとりは農民のエデュワルト・エストラーダでした」
「私たちには守ってくれる公的機関がありません。たとえば自分たちの身の安全や、地域の人たちと進めてきた私たちの平和プロジェクトの保護を政府軍に頼めません。信用できないのですから」
アメリカ上院議員 ポール・ウェルストーン
「無実の人が殺害される事件のおよそ80%は、準軍事組織の反抗です」
準軍事組織 支持派住民
「準軍事組織の狙っているのは、破壊活動グループに属する者たちだけです。決して一般市民は標的にしていません。襲撃したときはハッキリした目的があるのです。やるべきことをやったまでと、私は思っています」
コロンビアの人権擁護活動家 パードレ・ヒラルド
「準軍事組織は政治的な武装組織と言っていいと思います。対立するコロンビア革命軍などゲリラを追放するというよりは、むしろ労働組合や農民、先住民、人権団体、野党勢力を一掃することを目的としています」
コロンビア軍 元大佐 カルロス・ベラスケス
「コロンビアの軍隊は一般市民を保護することを重要な任務だと思っていないのです。民衆を守ることより、ゲリラ壊滅を最優先にして、行動しているのです」
<政府軍と準軍事組織によるコロンビア左翼組織壊滅作戦>
政府軍と準軍事組織は、コロンビアのすべての左翼組織を破壊することに目標を絞った。
そして政治活動家を見境い無く攻撃していった。
そのため地方から都市部に大量の難民が流れこんでいった。
現在、コロンビアの難民は150万人。
世界で3番目に多い数となっている。
国連人権高等弁務官コロンビア事務所 アメリゴ・インカルカテラ
「住民を追い立てるのは、政府軍の戦略の一端であり、準軍事組織の戦略でもあります。政府軍と準軍事組織は地域によって、政治的にも経済的にも自分たちの利益にかなった手を打っているのです」
<まかり通る人種差別と虐殺>
他の地域もバランカベルメッハと状況は同じだ。
政府機関は腐敗にまみれ、人種差別もまかり通っている。
中でも、アフリカ系コロンビア人社会は、政府軍と準軍事組織の攻撃にさらされてきた。
チョコ地区 元知事 ルイス・ムリージョ
「コロンビア北部チョコ県にある村では、コロンビア政府軍が爆撃を加えた上、準軍事組織が虐殺を繰り広げました。住民の多くは自分の土地を捨てて、出て行かなければなりませんでした。この地域は多様な生物が住んでいて、世界的にとても貴重なところなのです。そこで、長い間暮らしてきた我々先住民を追い立てようとしているんです」
カラリカ平和コミュニティ パコ
「大勢の政府軍と準軍事組織の兵士がやってきました。我々は敵と戦うだけで精一杯だったので、相手側の人数を数えるヒマなんてありませんでした。でも、村に来ていた非政府組織の代表者たちが、襲撃してきた相手の数を調べていました。あとでその時の報告書を見たら、送り込まれてきた兵士は全員で200人いたと書かれてありました」
カラリカ平和コミュニティ マリア
「準軍事組織の兵士はコロンビア軍と、再び村にやってきて手榴弾や銃で攻撃してきました。みんな散り散りに逃げたけど、怪我をした人もいました。ある兵士はひとりの男性を捕まえると、縛り上げ、服を引き裂いて、性器を切り取り、それからなぶり殺しにしていったのです」
アメリカ下院議員 ジム・マクガバン
「アメリカは、コロンビア政府に今すぐ準軍事組織との繋がりを断たなければ、援助を与えないと伝えるべきです」
米州軍学校監視団体 ジェフ・ウェンダース
「人権擁護団体や国務省の報告には、コロンビア軍が準軍事組織と繋がりを持っていることが明らかにされています。準軍事組織は政府軍から様々な情報を得たり、援助や訓練を受けています。携帯電話などを通して、直接連絡を取っていたことも知られています」
コロンビア統合参謀本部部長 アルフォンス・オルドネス
「我々と準軍事組織の間に、協力関係などは、一切存在しません。これまでそんなことは一度も無く、今後もありえないことです」
2001/7/23、デルリオ将軍が、準軍事組織の残虐行為に関与したとして、逮捕された。
デルリオ将軍はゲリラ戦略を教える米州軍学校の卒業生だった。
アメリカ下院議員 ジム・マクガバン
「調査を進めていくと、中央アメリカ、パナマ、コロンビアなどで、人権侵害をしている人の中に米州軍学校の卒業生が含まれていることがわかりました」
<米州軍学校の目的>
米州軍学校は冷戦時代が幕を開けた、1946年、アメリカ政府がパナマに設立した。
その後、学校はアメリカのジョージア州フォートベニングに移転。
市民からの反発を交わすために、安全保障のための研究所という名前に変えられた。
これまでに、ここで訓練を受けた兵士は6万人以上。
中南米各地から集められた兵士には、明確な役割があった。
マサチューセッツ工科大学教授 ノーム・チョムスキー
「ケネディ政権は中南米の軍隊の目標を一変させました。それぞれの国の国内の治安維持へ転換させたのです。アメリカは中南米の軍隊に、自国の国民と戦うための訓練を施したのです。そしてアメリカの支援を受けた冷酷な軍事独裁政権が次々に誕生。やがて抑圧の嵐が蔓延していったのです」
米州軍学校監視団体 ジェフ・ウェンダース
「反体制派の抑えこみを目的とした戦いでは、一般市民を威嚇し、ゲリラと関り合いを持ったり、ゲリラを支持するような素振りができないような戦略が取られました」
マサチューセッツ工科大学教授 ノーム・チョムスキー
「ケネディ政権は、1962年に、特別軍事顧問団をコロンビアに送り込み、国内問題の対処法について助言させています。顧問団のアドバイスは、準軍事組織の力を使って、共産主義者に対抗すべきだというものでした。ここでいう共産主義者とは、教会の司祭や組織化された農民たち、人権活動家、組合の指導者などのことです。すべてが共産分子として、攻撃目標にされたのです」
米州軍学校監視団体 ジェフ・ウェンダース
「一般市民に対する 政府軍と準軍事組織の行動には、必ず経済的利益が絡んでいます。利益が見込める地域に限って、住民の虐殺が頻発しているのです」
世界政策研究所(ニューヨーク) ウィリアム・ハートゥング
「コロンビアにおけるアメリカ政府の関心は、麻薬よりも、むしろ親アメリカ政権を作ることにあるのではないでしょうか。市場を自由化し、アメリカ企業を受け入れるために、北太平洋自由貿易地域(NAFTA)を中南米に拡大させるわけです。しかし、コロンビア国内がゲリラ戦の真っ只中にあっては自由市場の拡大は望めないでしょう」
国際政策センター(ワシントンDC) アダム・アイザックソン
「アメリカ政府は現状維持を求めています。今のままでも物を売り買いして市場を開くことができるからです。米州自由貿易協定が軍事支援の増強に併せ進められているのも、うなずける話です」
アメリカ国務省 ウィリアム・ブラウンズフィールド
「米州自由貿易協定は我々の構想の一部です」
「アメリカはコロンビアや他のアンデス地域諸国との貿易の妨げになっている障害を減らすために、広範囲な地域協定を結ぶべきです。貿易が活発になることで、アンデス地域諸国の経済的状況を改善できると考えています」
<米州自由貿易協定(FTAA) : アメリカによる軍事力を使った石油強奪計画>
アメリカ政府は米州自由貿易協定(FTAA)により、中南米諸国がアメリカ企業に、広く門戸を開けさせることを目指している。
かつてバナナ産業を牛耳っていた時代から、アメリカ企業の体制を守るために、大きな役割を果たしてきたのが軍事援助だった。
今はバナナではなく、石油がアメリカの最大の関心事になっている。
アメリカは中東への供給依存を抑える手立てを何年も探し続けてきた。
そして、ベネズエラがアメリカへの石油供給第2位に浮上してきた。
ゲリラ活動を抑えこみ、コロンビアにもアメリカ政府寄りの政権が誕生すれば、新たな石油開発が期待できる。
チョコ地区 元知事 ルイス・ムリージョ
「ここ数年間で、コロンビアの石油産出量は1日10万バレルから、90万バレル近くに増えています。アメリカへの輸出量も今や世界第7位です。ベネズエラの産出量は1日160万バレルです。コロンビアでも90万バレル産出しているのに、残念ながらあまり注目されてはいません。それに契約条件も外国の企業に有利なものになっています。かつて五分五分だった利益の取り分が、今は多国籍企業に75%、コロンビア政府には僅か25%の割合にすることが提示されているのです」
世界政策研究所(ニューヨーク) ウィリアム・ハートゥング
「コロンビアに莫大な権益を持っている企業は、利益拡大のチャンスとみなすでしょう。何とかしてゲリラを鎮圧するか、軍事介入を通じて脅威の少ない政治組織に変えることができれば、投資もしやすくなります。コロンビアをアメリカの自由経済区域に取り込むことも遥かに容易になるのです」
政策問題研究所(ワシントンDC) サンホ・ツリー
「除草剤散布は主に反政府ゲリラが支配する地域を標的に実施されているのです。多くの国民はコロンビア計画は麻薬対策よりも、ゲリラ対策に力を入れた政策だと考えるようになっています」
「コロンビアの石油産出量が増えると、アメリカは麻薬対策の名目で、13億ドルの援助と同時に軍事介入してきました。石油の利権に絡んだ地域に焦点を当てたものだということは、私たちも十分に承知しています」
マサチューセッツ工科大学教授 ノーム・チョムスキー
「アメリカでは世界の資源は自分たちの支配下になくてはならないと考えています。特に中南米に関しては、石油は我等の資源であって、よその国から出ようと、それはたまたま起きた事態に過ぎないのです」
<麻薬を資源ドロボウの資金として使う 薄汚いアメリカ>
外国に介入するアメリカは、長年に渡って、資源の確保に力を注いできた。
1954年、フランスがインドシナ戦争に破れて撤退したとき、アメリカの軍関係機関はある麻薬ルートを根絶しないままにしておいた。
その麻薬ルートで得た利益は、ベトナム独立同盟と戦う資金源になっていた。
マディソン大学教授 アルフレッド・マッコイ
「ニカラグアでは、(アメリカ諜報組織の)活動資金を得るために、反革命勢力のコントラが、コカインの密売に利用されていた可能性があります。同じパターンでコロンビアでも、アメリカは政府軍を介して麻薬組織と直接、繋がりを持つ民兵と密かに手を結ぼうとしているのです」
アメリカ下院議員 ジョン・コニャース
「コロンビアでは、麻薬の原料の栽培から販売、精製、密輸に至るまで、実に多くの人間が関与していて、見分けるのが非常に難しいのです。今の状況は単に麻薬の密売だけが問題の全てではなく、この国(コロンビア)そのものが病んでると考えるべきでしょう」
緑の党 イングリット・ペタンクール
「コロンビアにおける暴力や汚職は、すべて麻薬密売人の金で行われているということを、認識しておかねばなりません。腐敗した政治体制も同じことです。問題は何十万ドルというアメリカからの援助を、こんなコロンビア政府に与えていることなのです」
<麻薬の巨額資金はアメリカの銀行で自由にやりとりされている : ブッシュも絡んでいる>
アメリカの資金が腐敗している政府軍や準軍事組織に注ぎ込まれる一方で、麻薬の不正取引で得られた、およそ4000億ドルもの金は世界最大の金融機関(ウォール街)で自由にやりとりされている。
マサチューセッツ工科大学教授 ノーム・チョムスキー
「20年前、当時、副大統領だったジョージ・H・W・ブッシュ(パパ・ブッシュ)は麻薬取り締まりの最高責任者でもありました。そのころフロリダで捜査をしていた連邦検察官が、地元の銀行に大量の金が流れ込んでいることを突き止めたのです。すぐに捜査に乗り出しましたが、そこにブッシュが乗り込んできて止めさせてしまいました。アメリカ国内で麻薬がらみの金の流れを追跡した捜査は、それが最後となっています」
「詳細は誰にもわかりませんが、経済協力開発機構が行った研究によると、麻薬の密輸に絡む金の約半分が、アメリカの銀行を通過しているとみられます」
在コロンビア・アメリカ大使 ジェームズ・H・ウィリアムズ
「コロンビア政府は捜査当局と、緊密に連絡を図ってマネーローンダリングの問題に取り組もうとしています」
国際政策センター(ワシントンDC) アダム・アイザックソン
「マネーローンダリングを止めさせようとする法案は、これまでに何度も議会にかけられてきましたが、可決に至っていません。麻薬の密輸や、その他の不法行為の結果、莫大な金がアメリカの銀行に流れ込んでいるのです」
<麻薬取引もアメリカの国益 : 麻薬産業は超ビッグ・ビジネス!>
1997年から行われた国連総会でも、『麻薬に関する会議の報告書』は実に興味深いものだった。
マディソン大学教授 アルフレッド・マッコイ
「麻薬の不法取引が世界全体の貿易の約8%を占めていることがわかったのです。なんと、繊維産業の取引を上回っていたのです。衣食住の取引よりも、麻薬の不法取引の方が盛んに行われていることになるのです。警察や軍隊を使った荒っぽい手段では、国際的な麻薬の取り締まりにはあまり効果が無いように思えてきます」
政策問題研究所(ワシントンDC) サンホ・ツリー
「需要と供給の法則は、議会でも無効にすることはできないのです。」
アメリカ上院議員 ポール・ウェルストーン
「アメリカでは麻薬の需要が大きいにも関らず、麻薬中毒治療のプログラムは十分に行われていません」
国際政策センター(ワシントンDC) アダム・アイザックソン
「麻薬中毒患者が助けを求めても、『数ヶ月後に来てください。予算が無いので仕方ないのです』と、門前払いを食うのがオチです。それに引き換え、麻薬欲しさに犯罪を犯して刑務所に入るのは簡単です。残念ながらアメリカがコロンビアで優先した政策の結果は、こんなことに反映されているわけです」
<麻薬を無くす気は、アメリカの政権には無い : 「麻薬対策」の真相は麻薬撲滅に名を借りた「邪魔者は消せ作戦」>
2002/2、コロンビア計画に基づく大規模なアメリカの軍事支援が決定すると、アンドレス・パストラ−ナ大統領は突然、コロンビア革命軍との和平交渉を打ち切った。
ジョージ・W・ブッシュ(子ブッシュ)政権は、コロンビア計画を麻薬撲滅から、ゲリラ掃討へと転換したかのようだった。
麻薬対策の裏に隠れていた真の目的が明らかになったのだ。
アメリカ上院議員 ポール・ウェルストーン
「麻薬の需要を減らさなければ、コカの需要は延々と続くでしょう。市場がある限り、巨額の金が動く限り、麻薬取引は無くならないのです」