デタラメなテロとの戦争
Nuclear Insecurity : 核の危機
ズサンな安全管理のアメリカ「核兵器施設」
CBS 60ミニッツ 2004/2/12 放送
2004/9/21
<エネルギー省核安全対策の上級スペシャリスト リチャード・レバーニヤ氏>
リチャード・レバーニヤ氏はエネルギー省核安全対策の上級スペシャリストです。
アメリカ全土にある核施設のテロ対策に取り組んでいました。
施設は安全対策が万全でないばかりか、中には極めて危険なところもあったといいます。
レバーニヤ「核兵器や核物質を扱っている施設の安全対策のズサンな状態というのはあってはならないことです」
彼は911テロの遥か前から、テロ模擬テストを行ってテロ対策のチェックを行ってきました。
テストは武装テロリストに扮した軍の特殊部隊が施設に侵入し、核物質を盗んで脱出するものです。
警備員たちにはこの襲撃を阻止することが求められます。
レバーニヤ「私が担当した(テストの)内、50%が不合格というものでした」
- それは2回に1回の割合でテロリストが施設に侵入できたということですね? 50%の確率で、彼らは塀を越え、警備員も防犯カメラもやり過ごし、施設内に侵入した。そしてプルトニウムや、その他の核物質をまんまと盗み出した。しかも施設の外へ持ち出すことができた。 -
レバーニヤ「そうです」
- 恐ろしい結果ですね -
レバーニヤ「もし、核物質が実際に盗まれたとしたら、911の衝撃すら霞んでしまうような(恐ろしい)事態を招きかねないのです」
<エネルギー省核安全保障管理局の責任者リントン・ブルックス>
エネルギー省核安全保障管理局の責任者リントン・ブルックス氏は、核兵器施設を監督する立場にあります。
10000発を超す核弾頭と、その製造に使われる何トンものプルトニウムや高濃縮ウランが貯蔵されている施設の安全対策について彼はこう主張した。
ブルックス「完璧です」
- 完璧? -
ブルックス「ええ」
- 核兵器施設は安全だとおっしゃるのですね? -
ブルックス「ええ」
- テロ対策は万全で問題は無い? -
ブルックス「『安全である』と『問題が無い』という表現は同じではありません。このような核施設は安全で、核物質は危険に曝されているようなことは無いと考えていますが、だからといって、改善すべき点が全く無いと言っているわけではないのです。一口に安全対策といっても難しい問題なのです」
<各施設はスーパーボウルに夢中で誰も警備していなかった>
テストの結果を知るレバーニア氏にとって、それは弁解にしか聞こえません。
警備員たちにはテストの具体的な実施日時が知らされていたにも関らず、テロリストに扮した特殊部隊が、2回に1回は施設に侵入できたのです。
さらに今年(2004)の1月、レバーニヤ氏を唖然とさせることが起きました。
コロラド州の核兵器施設を予告無しで立ち入り検査したところ、
レバーニヤ「当然、施設の周りは警備員がパトロールしていると予想したのですが、1人もいませんでした。中に入ってみると、パトロール要員のほとんどが施設の中でスーパーボウルを観戦していたのです」
- もし、本当にスーパーボウルのあった日曜日にテロリストが現れたら? -
レバーニヤ「簡単に侵入できたでしょうね」
- 警備員は試合を観ていた? -
レバーニヤ「そうです」
<報告されたズサンな管理のケース>
警備のズサンさはエネルギー省も認めている。
最近、報告されたケースでも、「施設の通用門を開けっ放しにしていた」、「最高機密エリアで鳴った警報を無視した」、「警備員が勤務中に居眠りしていた」ことが上げられている。
- 市民の中には心配どころか恐怖心を抱く人もいるでしょうね。でも、そういう気持ちになるのも当然のことでしょう? -
レバーニヤ「もちろんです。国民はエネルギー省の施設が本格的なテロに遭ったとしても、防ぎきれないかもしれないという事実を知るべきです」
- 本格的なテロとは? -
レバーニヤ「国家がバックアップしているようなプロ集団によるテロという意味です」
<テストでは簡単に核施設に侵入できたが、「それは単なるテストだから」!?>
- テロリストに扮したは特殊部隊は、様々な防犯装置を乗り越えて、2回に1回は施設に侵入できたそうですね? -
ブルックス「それは単なるテストですからね。その結果だけを見て評価するのは適当ではないと、我々は考えています。ですから....」
- でも、ちょっとよろしいですか? -
ブルックス「どうぞ」
- テストだったとしても、プルトニウムや濃縮ウランを手に入れて、施設から脱出できた。これは問題でしょう? -
ブルックス「もちろん、結果に我々が満足しているわけではありません。でも、テストというのは問題を浮き彫りにするためにあるもので、当然、ハードルは高く設定されるものです」
しかし9/11以来、テネシー州オークリッジの核施設Y12と、ニューメキシコ州のロスアラモス国立研究所は、少なくとも3回テストでテロリストの侵入を許しています。
Y12は核兵器用ウランを製造するアメリカの主要施設、ロスアラモス国立研究所は初の原子爆弾が開発された施設です。
エネルギー省は、現在、安全強化策に乗り出していると主張。
テストの数を増やすと共に、カミソリの付いた鉄条網や、高感度センサーを設置。照明も改善し、その他の新しいテクノロジーも採用。さらに警備員も増加している。
<警備員は義務付けられた訓練も行っていない>
マシュー・ジポリ氏はサンフランシスコ郊外にあるローレンス・リバモア国立研究所の特別警備員の一員。
警備員組合の副議長でもある彼は、強化策は不十分だという。
ジポリ「それはみんな中身の伴わない単なる見せ掛けに過ぎませんよ。表向きは立派ですがね」
警備員には年に一度、地元警察と共同でテロ対策訓練を行うことが義務付けられているそうですが、ジポリ氏が警備員になってから一度も実施されていないそうです。
- リバモア研究所がそういう訓練を最後に行ったのは? -
ジポリ「1996年に地元警察と研究所が行った訓練が最後です」
- 年1回義務付けられているのにですか? -
ジポリ「そうです」
- それでは、みんな十分な訓練を受けていないと? -
ジポリ「受けていません、敵を出し抜くテクニックも教わっていなければ、テロ対策用の装備さえ整っていないのですから。これでは警備員としての十分な訓練を受けたとは言えません。チームの能力が低下するのは当たり前です」
<何百ものマスターキーも紛失 : 機密エリアのキーまでも>
さらに恐ろしいことに、テロリストは簡単に施設に侵入できるかもしれません。
核施設から何百個ものマスターキーやキーカードが紛失しているのです。
その中には、機密エリアにアクセスできるキーも含まれていました。
エネルギー省監察総監によれば、リバモア研究所は核兵器に関する最高機密を保持しているにも関らず、キーの紛失をすぐに当局に報告しなかったというのです。
アルバカーキにあるサンディア国立研究所では、キーを紛失した後、3年も経ってから、やっと錠前を付け換えたそうだ。
議会で核安全対策の改善を訴え続けてきたチャールズ・ガースリー上院議員は信じられないという。
ガースリー「自分の家の鍵が盗まれたら、みんなすぐに換えるでしょう?それを3年も放置したのですよ。3年間、錠前を換えなかったなんて酷すぎます。その間に、機密情報が敵の目に曝された可能性が何度あったかを考えると、ぞっとしますよ」
- キーはやはり、悪意を持った人の手に渡ったと考えますか?あるいは単なる不注意から紛失したのでしょうか? -
ガースリー「確かなことはわかりませんが、悪意を持った第三者の手に渡った可能性もあると思いますよ。でも、キーを紛失したことより、もっと大きな問題は研究所の姿勢です。これは研究所が安全対策について真剣に考えていないという証拠ですよ」
<何千何万のドアを開けられるだけのキーも紛失した (総取替え費 170万ドルをケチった?)>
- エネルギー省の監察総監によれば、職員たちは過失を犯しても、それを真剣に受け止めていないそうですね。なぜなのですか? -
ブルックス「それは.... わかりませんねぇ。なぜ真剣に受け止めないのか理解できませんし、それは許しがたいことです」
- でも実際、そうだというのですから -
ブルックス「でも、今は、真剣に考えていますよ」
- 何千何万ものドアを開けるだけのキーが紛失したケースもあったそうですね? -
ブルックス「ええ、そう聞いています。
- 大問題でしょう? -
ブルックス「もちろんです。ですから、問題を解決しようと努力している次第です」
<ロスアラモス国立研究所は、あらゆる面で核保安規制に違反>
ロスアラモス国立研究所で安全対策を担当する、エネルギー省の上級職員クリス・スティール氏。
彼の仕事は核兵器工場で事故が起きた時、職員や住民が危険に曝されないようにすることです。
- ロスアラモス研究所の安全を評価することも、あなたの仕事の一部ですか? -
スティール「そうです」
- あなたの評価は? -
スティール「そうですね... F。つまり不合格です。あらゆる面で核保安規定に違反しています。」
2003年、彼はロスアラモス国立研究所には核保安規定の違反が45件もあると指摘。
前代未聞のことです。
- 45件違反の持つ意味について教えてください -
スティール「45件も違反があるということは、安全対策自体に間違いがあるということです。彼らはそれを、ちょっとした欠陥であると考えています。早急に解決しようという感覚が無いのです。大惨事に繋がるという恐れがあるというのにね」
ロシアラモス研究所の作った安全ガイドラインそのものに欠陥があると彼は言います。
たとえば、放射性液体貯蔵庫で大きな爆発があり、何千リットルもの核廃棄物に火が伝った場合、『スプリンクラー・システムが作動し、鎮火』と書いてあるそうです。
スティール「何万トンもの瓦礫の中で、スプリンクラーが作動し、鎮火すると書いてあるのですが、そんなことが、できるわけがありません」
- つまり、衝撃による振動が起きたとか、テロリストが飛行機で突っ込んだ時でも、火災や放射線漏れを心配することはないというのですね?スプリンクラーが作動して火を消し止めるからと -
スティール「そうです。そう書いてありました」
- なせ、そんなことを? -
スティール「さぁ。私には説明できません。まるで理解できませんね」
<研究所の安全対策の危険性を訴えると、上からの報復がある>
しかし、研究所の危険性について上司に報告したスティール氏を待ち受けていたのは、『停職』という処分でした。
ロスアラモスの同僚とeメールを交換し、安全規約を破ったというのです。
リバモア研究所警備員のジポリ氏は、警備員ストを組織したとされ、解雇されました。
テロ対策のテストを担当していたエネルギー省職員レバーニヤ氏は、新聞取材の際に、機密情報を漏らしたとされ、降格処分を受けました。
3人とも、これは報復措置だったと主張しますが、エネルギー省はこれを否定。
しかし、彼らが語ったことの多くは、後に様々な連邦機関によって実証されました。
ジポリ氏復職。スティール氏の嫌疑も晴れ仕事に戻った。
<システムが複雑なことに原因があります>
エネルギー省核安全保障管理局の責任者ブルックス氏は『安全対策がなっていない』という申し立ては真摯に受け止めると言います。
- こうした懸念については1997年以来、報告書にいつも指摘されてきました。それがつい数ヶ月前まで続いてきたということは、いったいどういうことなのでしょうか? -
ブルックス「システムが複雑なことに原因があります。いろいろ問題を抱え、その対処に時間がかかってしまうのです。まぁ、あなたが、私の後任に取材するときには、同じ問題が繰り返されることは無いでしょう。問題を解決するための長期的なシステムを作りましたからね」